加藤七宝

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七宝ができるまで

七宝ができるまでには、実に様々な加工を施し、さらに各行程においてたいへん細密で、常に繊細な感覚を必要とします。ひとつひとつ手間の限りを尽くして製作する七宝は、美しさを求める職人の集中力の結晶です。


素地の成形には、作品の形状に合わせ、ヘラ絞りや金型を使ったプレス加工、木槌による打ち出しなどの方法を使い分けます。また、その素材には純金属が用いられ、特に成形の容易さ、七宝釉との相性などの理由から、銅や銀が多く使われます。素地成形後、それぞれのものに合わせた釉薬を焼き付けていくことで、ベースが出来上がります。

変化に富んだ形状をした素地の加工を成功させるには経験だけが頼りとなります。
決して機械化できることのない作業を丹念にこなしていきます。

植線に使用する道具も七宝職人の手になじむよう、手造りで作られていますが、近年、その道具職人の数が少なくなり、これらの道具は大変貴重な物となりました。


純銀製の綿を模様の輪郭に沿って、ひとつひとつ丁寧にピンセットで形作ったものを立てていきます。純銀の綿は、最終的に一番高い部分だけが表面に出て、模様の輪郭線となります。

この工程は尾張七宝の最大の特徴ということができ、非常に繊細で細密な手業の繰り返しで、高度な技術を要します。

熟練の職人は、驚くほどの速さで銀線を加工していきます。しかし、その域に達するには、少なくとも10年はかかるとも言われています。


植線された模様に色をつける工程です。七宝の釉薬は色ガラスを砂のような状態にしたもので、それに水やのりを入れて、筆やホセ(竹べら)を使い、銀線で囲まれた模様の内と外の部分に入れていきます。

美しく施釉するには水分のコントロールがとても大事なポイントで、「塗る」というよりは「さす」という感覚です。

尾張七宝の釉薬は、各窯元がそれぞれ秘伝の調合で原料を混ぜ合わせたものを七宝町にある専用の施設にて焚き、生産されています。


尾張七宝(有線七宝)の場合、下地作りから完成まで合計すると、少なくとも7回程度は焼成の工程が入ることになります。

回数がかさむにつれ、釉薬の層が厚くなり下方に溜まりますが、厚みのバランスが崩れると割れるなどのトラブルの元になるため、立て焼・伏せ焼を繰り返し焼成します。最終的に、釉薬の層が3mm近くになる作品もあります。

釜の温度が900度にまで達する場合もあるこの工程、作務衣のうえにさらに厚手の作務衣・専用の前掛けを、顔には面を着けます。


有線七宝の仕上げとも言える工程が本研磨です。

名前の通り研いで磨いていくことで、シャープで艶やかな表面に仕上げていきます。100番から6000番までのダイヤモンドペーパーを用い、荒いキズから、段々と、目には見えないような非常に細かいキズにしていくことで、艶のある表面にしていくのです。

道具の変更・改良、工程の見直しなどにより、当製作所においての研磨技術は、飛躍的に向上し、仕上がりの表面をより滑らかで艶やかにすることが可能になりました。

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