加藤七宝

Instagram

三代目見習い日記

8寸口細形の梅詰花瓶の焼成

2009年 11月 19日

久しぶりに梅詰花瓶の続編です。
前回、全体に釉薬を施したものをしっかり乾燥させたら、いよいよ焼きます。
入れるものやその工程にもよるのですが、だいたい尾張七宝の場合よく使用する温度帯は700℃から800℃程度の温度で、炉に入れてから5分から長くても10分程度の時間で焼き上げます。

炉から出すタイミングを計りながら炉内の様子を見ます。
焼き加減の見極めは職人の経験によるところが大きく、釉薬の融点やものの大きさ・数など様々な要素を総合的に考えて見極める必要があるので、簡単ではありません。

適度に焼き上げたら、いっきに炉から出して自然冷却させます。
七宝は素地に金属(銅)を使用しているため、急熱急冷でも壊れることはありません。
出した直後は800℃近い温度になっているため、熱を帯びた真っ赤な色をしていますがしばらく冷ますと釉薬本来の色がにじみ出てきます。
このときの変化は七宝において一番の見せ場になりますが、なかなか一般の人は目にすることはできない光景だと思います。
また余談ですが、今回のような立体作品の場合、バランスよく焼くために立て焼き・伏せ焼きを繰り返す必要があり、さらに難易度の高い作業になります。

上の写真をよく観ると分かると思いますが、焼成前の釉薬はかなりこんもりとしていたのに、焼成後はずいぶんと縮んで銀線より低くなります。
そのため、この後さらに釉薬を重ねて焼成を繰り返します。
銀線の高さをやや超えるくらいになるまでが基準で、その後研磨の工程へと移ります。

posted by Yoshiro Kato

8寸口細形の梅詰花瓶の施釉

2009年 8月 18日

塗り込みの工程から絵の具を施していく「施釉」の工程です。
銀線の内側と外側にそれぞれの色釉薬をいろんな大きさの筆やホセと呼ばれるへらなどを使って、一カ所一カ所ていねいに色付けしていくのですが、滞りなく作業を進めるにはかなりの熟練が必要になります。
まず一番のポイントとなるのは釉薬の水分量で、多すぎれば流れてしまいますし、少なすぎれば釉薬が思うように動かないため、常に適当な水分量をコントロールしながら作業することが求められます。
額などの平面状の場合は少々水分量が多めになっても、水平ですので施した釉薬が流れ出て模様が台無しになることはほとんどありませんが、立体の場合は常に作業面を水平に維持しての作業になりますので、「馬」と呼んでいる専用の手作り作業台などを使って、安定した状態を維持しながら作業しています。
今回紹介している8寸口細形の花瓶は、形が球体に近いため水平を維持することにとても気を使いました。
全ての部分に釉薬を施したら、しっかりと乾燥させてから800℃程度の温度で焼成します。
また、釉薬は銀線の高さを少し超えるくらいに施します。
写真のようにもりもりな感じに釉薬を施しておいても、焼成するとかなり収縮して銀線がまだまだ飛び出た感じになります。
施釉と焼成を何度か繰り返し、焼成した状態で銀線が全て釉薬で覆われるくらいの高さになるまで繰り返していきます。
次回、焼成の模様を予定しています。

posted by Yoshiro Kato

8寸口細形の梅詰花瓶の塗り込み

2009年 7月 20日

8寸口細形の梅詰花瓶の続きです。
植線をした花瓶を一度焼き付けた後、梅の花の中を白い色の釉薬を低めに施して白ベースにする工程です。
梅の花に使う白釉薬はかなり不透明に近い釉薬ですが、それでも赤色ベースのままでは、赤釉薬の色を反映してしまいきれいな白にならないため、花の部分だけベースを白色にします。
白釉薬を適度な高さに施し、適度な焼成加減にすることは容易ではなく、かなりの熟練を必要とする作業です。
写真は白釉薬を施した後に、再度焼成した状態です。
次回は、施釉(釉薬を施す)の工程になります。

posted by Yoshiro Kato

8寸口細形梅詰の銀線立てました

2009年 7月 14日

先日、8寸口細形の梅詰め花瓶が売れました。
このクラスの製品になりますと、通常在庫は1点しか持っていません。
売れたことによって在庫がなくなってしまったので新たに製作することになりました。
今回はせっかくの機会ですので、その途中経過を書き記していこうと思います。
写真の状態は素地の段階から数工程進んだ模様付け(銀線を立てる)の段階です。
墨によって下絵が施されたところに、ピンセットで一つ一つ梅模様に形作られた銀線が花瓶全体にびっしりと立てられています。
この道何十年の職人さんでも何日もかかる、たいへん根気と集中力を必要とする作業です。
花瓶の口がとても細く形も大きいため、この工程に限らず花瓶を作業しやすい位置で固定するだけでも苦労します。
専用の作業台などを準備して、やりやすい状態にできるように工夫しています。
写真の状態は、のりで銀線が仮固定されている状態なので、このあと焼成して銀線を焼き付けます。
次回、「塗り込み」と呼ばれる工程に進みます。
この製品が完成するまでをまたこのブログにて経過報告していきたいと思います。

posted by Yoshiro Kato

ページのトップへ